五のことづて

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

残暑の季節も過ぎ去り、すがすがしい風が秋の気配を運んでくる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
五穀屋では、水窪で育てた粟も収穫を迎え、今年も多くの実りを得ることができました。
皆様の周りでも、そろそろ稲刈りシーズンを迎えた田んぼがちらほらと見られているのではないでしょうか。

今日は、この“実りの秋”に五穀豊穣への感謝をこめて行われる、古来より伝わる2つの宮中祭祀についてお伝えして参ります。

▼ 稲刈り後の稲架掛け(はさがけ)の様子

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

皆様は、秋に皇居にて行われる宮中祭祀として「神嘗祭」と「新嘗祭」があるということをご存じでしょうか?

「神嘗祭」は「かんなめさい(かんなめのまつり・かんにえのまつり)」と、「新嘗祭」は「にいなめさい(にいなめのまつり・しんじょうさい)」と読みます。
神嘗祭は10月17日、新嘗祭は11月23日と、日程は異なりますが、どちらもその年の五穀豊穣を神様に感謝するお祭りです。


まずは、「神嘗祭」。

こちらは、神様に新穀を奉ずるお祭りです。

▼ 秋晴れにそよぐ稲。初穂を神様にお供えするのが「神嘗祭」です。

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

この“神”は、日本書紀にも登場する太陽の神様で、伊勢神宮に祀られている「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」のことを指しています。

宮中(皇居)はもちろん、伊勢神宮でも執り行われているこのお祭りは、年間1500回におよぶ伊勢神宮のお祭りの中で最も重要とされ、このタイミングで装束や祭具を一新して年を新たにすることから、「神嘗正月(かんなめしょうがつ)」とも呼ばれています。

神嘗祭の間は様々な神事が行われますが、そのうち代表的な4つの神事を、「由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)」、「由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)」、「奉幣(ほうへい)」、「御神楽(みかぐら)」といいます。
簡単に説明すると、由貴夕大御饌と由貴朝大御饌は神様のお食事、それぞれ夕食と朝食のことで、海川山野の約30品目とお酒がお供えされます。
奉幣では、天皇陛下から遣わされた勅使が神様に供物を贈り、そして御神楽では神様に喜んでいただけるように舞を披露します。

▼ 伊勢神宮にある宇治橋の大鳥居

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

また、このような神事の他にも、神嘗祭をお祝いするために「神嘗奉祝祭(かんなめほうしゅくさい)」といった市民祭りも開催されます。
これは、1年に1度この時期だけ、日本3大民謡、3大踊り、3大パレードをはじめとする全国の有名なお祭りが伊勢に集うという盛大なものです。

▼ 日本3大踊りの一つ「阿波踊り」も披露されます。

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

この神嘗祭、かつては旧暦9月17日(新暦10月17日)に行われていましたが、明治6年に太陽暦が採用された際に新暦の9月17日に実施されるようになったことがあります。
しかしこの後すぐ、明治12年に今の新暦10月17日に変更されたのですが、その理由は「一カ月早まったことで、お供えするための初穂の生育が不十分になってしまったため」でした。
「神様にお供えする新穀はしっかり実ったものでなくてはならない」という日本人の神様への敬意と、真面目な性分がうかがえますね。


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さて、神嘗祭についてわかったところで、次は新嘗祭についてお話いたしましょう。
新嘗祭はその名の通り「新穀を神様に奉ずる」お祭りです。

神嘗祭との大まかな違いは、奉ずる相手が「天神地祇(てんじんちぎ)」であることと、その後天皇陛下も新穀を召し上がることです。
天神地祇とは、“すべての神様”を示していますので、10月17日に天照大御神に奉じたあと、その他のすべての神々へお供えするのが新嘗祭ということになります。

この新嘗祭は飛鳥時代の皇極天皇の御代から続くとされている歴史あるお祭り。さらに、明治6年から昭和22年までは同名の祝日として、全国民に広く浸透していました。
昭和22年と書きましたが、今はなくなってしまったのかというと、そうではありません。
実は名前を変えて別の祝日として現在に残っているのです。
ヒントは、新嘗祭の行われる日付「11月23日」。

もうお分かりですね?

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

そう、11月23日の祝日といえば「勤労感謝の日」です。

昭和23年に公布・施行された「国民の祝日に関する法律(祝日法)」により、「新嘗祭」は、「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日として「勤労感謝の日」に生まれ変わりました。

今までなんとなく過ごしてきた勤労感謝の日のルーツが、もともとは五穀豊穣を祝う祭祀「新嘗祭」にあるということを初めて知ったという方も多いのではないでしょうか?

▼ 勤労感謝の日には、五穀豊穣に思いを馳せて新米をどうぞ。

実りの秋、五穀豊穣に感謝する2つの祭祀、「神嘗祭」と「新嘗祭」とは?

名前こそ変わってしまいましたが、古来より稲作文化として発祥し栄えてきた日本では勤労=稲作だったところを、より広い意味にしたことを考えると、五穀の収穫を祝い、感謝するという根本の思いには変わりはないのかもしれませんね。


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いかがでしたか?
今回は、神嘗祭と新嘗祭、2つのお祭りについて簡単にご説明いたしました。

今年の新米を食べるときには、ぜひこの2つのお祭りに思いをはせながら、お米を育ててくれた農家の方々の勤労に感謝してみてはいかがでしょうか?