五のことづて

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

山深い地域にはその土地に特有の文化や慣習などが残っています。
文化を継承している人達からみたらあたり前のことも、外から見るとミステリアスで魅力的にうつるもの。
今日は「五穀の里 水窪(みさくぼ)」に伝わる、不思議な慣習「祇園(ぎおん)」についてお伝えいたします。


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夜空に浮かぶ美しい火の芸術、花火。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

皆様も子供のころの夏の思い出に、家族や友人と楽しんだ花火の記憶が刻まれているのではないでしょうか。

そんな花火は、夏の風物詩。
「打ち上げ花火」は、その花火職人たちが技術の粋を競いあう「花火大会」や、各地の夏祭りなどで見ることができます。
また、市販の花火を買ってきて、どこでも自由に楽しめる「手持ち花火」も、私たちにとって身近な存在です。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

水を汲んだバケツやライター・蝋燭があればすぐに楽しむことができ、道具さえあれば、夏といわず1年中遊ぶことができます。

しかし、こと水窪に関して言えば、花火は年中楽しめるものではありません。
というのも、水窪では基本的に花火は禁止されており、年に2日間だけ自由に楽しめる日が決まっているためです。
この2日間は6月14日・15日と日付が決まっていて、「祇園(ぎおん)」と呼ばれています。

名前の由来は京都の祇園祭から、というのが通説ですが、詳細ははっきりしていません。


そもそも、水窪で花火が禁止されたのには理由があります。
それは大正時代に起こった「水窪大火(みさくぼたいか)」。

大正14年の2月25日、水窪では大きな火事があり、140戸もの家屋が焼失しました。
住民は焼け出され、町は焼け野原となったこの火事の戒めとして、花火が禁止になったのです。
現在でも、この大火の教訓をもとに、2月には地元消防団による消防訓練が行われています。

しかし、地元の子供たちにとっては祇園は年に1回花火が楽しめるチャンス。
昔から子供たちはこの日を楽しみにし、朝早くから夜遅くまで花火に興じたと言われています。
また、子供だけでなく大人たちも爆竹やロケット花火を楽しみ、町中から花火の音が聞こえてきたそうです。


今年も、去る6月14日・15日に祇園がおこなわれました。
当日の様子を少し、ご紹介いたしましょう。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

夜もふけたころ、水窪の町を歩くとどこからともなく爆竹や花火の音が聞こえてきます。

現在では子供の人数も少なくなり、さすがに町中というほどの規模ではありませんが、それでも町のいたるところで花火をしている様子でした。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

▲ 子供から大人まで年代問わず花火を楽しむ人々

水窪の方によると、花火をすることができる時間帯は「朝6:00〜夜21:00」と決まっているとのこと。
花火が好きな子供たちの中には、朝早く学校に行く前に遊ぶ子もいるそうですよ。

ここで、せっかくの年に一度の祇園に来たということで、爆竹に挑戦させていただきました。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

導火線が短いため、着火してすぐに手を離し、なるべく遠くに放り投げます。

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

大きな破裂音が響き渡り、閃光がまぶしく闇を照らしました。
またその音に答えるかのように、町内のどこかで爆竹をならす音が響きます。

近所の住民で集まり、大人も子供も一緒になって花火に興じる姿に、町民の絆の深さを垣間見ることが出来ました。

▼ 線香花火を落とさない時間を競う、水窪住民の皆様

水窪に伝わる不思議な伝統、1年に2日間だけ花火ができる「祇園(ぎおん)」。

その後、21:00の町内放送が流れて祇園の終了がお知らせされると、消防車が町内をぐるりと見回り安全をたしかめます。
町民たちは道路の片付けを始め、翌朝には何事もなかったかのように日常に戻るのだそうです。


いかがでしたか?
水窪の特有の行事「祇園」の様子が少しでも伝わったでしょうか。

実際に参加してみたところ、町の雰囲気に「お祭り」めいたものは感じられず、どちらかというと日常のくらしの風景といった印象で、お盆の迎え火・送り火をしている様子に近いものがありました。
水窪の人々にとっては、日常に隣り合ったあたり前の行事ですが、外の世界の我々からすると極めて特殊で面白く、新鮮に感じられますね。

ご興味がおありの方は、ぜひ来年の6月14日・15日に水窪を訪れてみてはいかがでしょうか?