五のことづて

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

桜若葉が青やぐ、新緑の季節となりました。
皆様いかがお過ごしですか?

今回は、五穀屋でも栽培している「アワ」に注目。
普段は触れることの少ない、「五穀」の知恵を学んでみましょう。

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

アワは、東〜中央アジア原産のイネ科・キビ亜科・キビ族・アワ属に分類される、1年生作物。
縄文時代での栽培が確認されている、日本最古の穀物のひとつです。
イネが伝わる前の主要穀物として、古代の人々の大切な栄養源になっていたと考えられています。

『古事記』では穀物の神様である大気都姫(おおげつひめ)の耳から、『日本書紀』では保食神(うけもちのかみ)の額からうまれたとされていて、当時は米や麦よりも格式の高い穀物として扱われていたことが伺えます。

さらに、万葉集でもアワが登場する和歌が詠まれています。

「足柄の箱根の山に粟蒔きて 実とはなれるを会はなくも怪し」

この歌を現代語に訳すと、
「足柄の箱根の山に粟をまいて実らせたように、私の恋も実ったはずなのに、逢えないのはどうしてでしょうか。」
となります。

万葉集では、「アワ」を「逢は」にかけた恋の歌が他にもあり、この時代の人々がアワを身近なものとしていたことがわかります。

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

世界的に見ると、穂が大きな「オオアワ」と穂の小さな「コアワ」がありますが、日本で栽培されているもののほとんどはオオアワ。
五穀屋で栽培している「ネコアシアワ」もオオアワの特徴である大きな穂がみられます。

そして、アワの原型と言われているのが、皆さんも知っている道ばたによく生えているこちらの「ねこじゃらし」。

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

アワの原型といわれるだけあって、シルエットがなんとなくアワの穂に似ていますね。
子供のころ、ねこじゃらしで遊んだことのある方も多いのではないでしょうか?

このねこじゃらしは、正式には「エネコログサ」といいます。
エネコログサは世界的に、東アジア・シベリア〜ヨーロッパ・アメリカ北部まで広く自生していますが、
一方、アワは東〜中央アジアで生まれた後、シベリア・オーストリアを経て石器時代にヨーロッパに伝わったとされています。
そう、実はアワはヨーロッパでも馴染みのある食材なのです。

アワの英名は「Foxtail millet」。
英語圏の人はアワの穂を「きつねのしっぽ」のようだと感じて名付けたようです。
アワの穂を動物のからだの一部に例えるところは、ネコアシアワを名付けた天竜・水窪地域の人々に通じるところがありますね。

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

アワはその後、ヨーロッパを経て、アメリカ大陸にも伝播していきました。
初期のアメリカ移民がヨーロッパからアワを持ち込んだのが、アメリカ大陸での栽培のはじまりでした。

そしてその後、1849年からアメリカでアワの栽培が奨励され、20世紀には、麦・米・トウモロコシなどの主穀類を除いた穀物の生産のうち、90%をアワが占めるほどになりました。
アメリカでは主穀類には劣るものの、意外にメジャーな作物なのです。

これに対して、日本では古来から、2,000以上の品種のアワがあるとされていますが、同名とされていても実は違う品種のものや、違う名前でよばれていても同じ品種のものなどが混在していて、詳細は明らかになっていません。

そしてその多くは、作り手の減少によって消えてしまい、今ではほとんどが消滅に近い状態です。
現在の栽培種としての主な品種は岩手県でつくられていますが、日本各地にかつて存在した在来種の多くが消えてしまいました。

五穀屋が、アワの日本古来の在来種「ネコアシアワ」を栽培しているのは、古から連綿と伝わってきた「和の知恵」を繋いでいきたいという想いがあってこそ。

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

五穀-いつくさのたなつもの- ②アワ

古より伝わる知恵も、伝える人が居なければ消えて行ってしまう儚いもの。
アワの保護・後世に残す活動は日本の文化史上においても大切なものなのです。


今年も、5月から五穀屋のアワ栽培がはじまります。
一般の方々の種まきへの参加も、今年から募集しています。
ご興味のある方はぜひ、ご応募くださいませ。


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いかがでしたか?
今回は五穀のひとつ「アワ」について、その歴史を少しご紹介しました。

古代から伝わる貴重な存在である日本の「アワ」。
皆さんも日常の生活に取り入れて、古の日本に思いをはせてみてはいかがでしょう?



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