五穀屋×職人醤油
対談 第1回「運よく出会えたこと」をつなげてカタチにしていく

お久しぶりです。

お久しぶりです。お元気でしたか?

元気です、元気です。初めてお会いしたのはもう3年前になりますよね。
群馬の「職人醤油」で偶然お会いできたのが最初です。
【Column】
五穀屋が職人醤油と出会ったのは、2015年の冬でした。その出会いの立役者となったのが、今回対談する二人です。
五穀屋の立ち上げから携わる、有限会社春華堂 常務取締役 間宮純也と、株式会社デザイン工房を創立し「職人醤油」を作った、高橋万太郎さん。
醤油を使った商品の開発秘話や、お互いの仕事へのこだわりなど、尽きぬ話の始まりです。
「運よく出会えたことが始まり」

2014年に発酵と五穀をコンセプトにした五穀屋ができたんですけど、
「発酵」ってそもそも何なのかっていうのを全然分かってなくて。笑
まずは素材のことを知らなきゃって思って、いろいろな製造元さんとか詳しい人を訪ねていってました。
あれは確か新潟の星六(せいろく)さんっていう味噌蔵に行って。
その時まで、味噌と醤油ってなんとなく別々で考えてたから
「味噌屋さんに醤油って置いてあるんですね〜」って聞いちゃった。ど素人だからね。笑
そんな話の中で、そういえば、群馬に醤油専門で扱っているお店があるよって、職人醤油って言うんだよって。
最初に聞いた時は「何、職人醤油って」って思いましたよ。(笑)

よく言われます。
ー 一同大笑い

職人醤油なのに、いっぱいの醤油を扱ってるって、自分の中ではちょっとハテナで。
その新潟出張からの帰り道に、自分の地元でもある群馬県前橋市に立ち寄って、
昔自分が好きだった餃子屋とか焼きまんじゅうを食べたりとかしてて、
その時に寄らせていただいたらちょうどいらっしゃったんですよね。

【PROFILE】
間宮純也 有限会社春華堂 取締役常務/1973年生まれ。群馬県前橋市出身。小学校の先生、議員秘書などを経て2008年に(有)春華堂に入社。
社長と共に「春華堂131年の伝統」と「職人の手技」を繋ぎながら、更に新しい風を届けるため世界や日本各地を回り、新しいお菓子のカタチを創造している。

そうです、そうです!たまたま居て。

そう。すーごい運良くいらっしゃって、で、そこからですよね、始まりは。
まぁだからなんか商品にできたらいいよねって、使いたいよねって言ってて。
2016年に松屋銀座に出店することがきっかけでもう一度お会いした時に、
醤油の黒と白がある面白さを伝えたらいいんじゃないか?と教えてもらって。

黒醤油と白醤油で作るおせんべいは絶対味が違うはずだから、
醤油の幅を伝えられる面白い商品ができるかもって思いました。

じゃあ頑張って作るぞってなったのを覚えてますね。
そうしてできたのが「山むすび 職人醤油」。

【商品紹介】
五穀屋で1番人気のお菓子「五穀せんべい・山むすび」
その季節限定品として2016年秋から販売しているのが、「山むすび職人醤油(黒たまり・白たまり)」です。
秋と冬の限定品ということもあり、その季節になると「待ってたのよ!」というお客様の声があがるほど。
南蔵商店「黒たまり」と足助仕込「白たまり」で作る二種類の味。
お醤油の違いをお菓子で感じてもらおうと、五穀屋と職人醤油で作ったおせんべいです。
「もともとは顕微鏡の営業マン」

それで、今さらながら聞きたかったのが、万太郎さんは何で醤油だったんだろうって。
生まれて、おぎゃー!しょうゆー!ってならないでしょ?
だから、どういうタイミングで醤油に興味を持ち出したのかっていうのは確かに聞いてみたいなって思ってました。

ありがとうございます。

それが後から作られた話なのかどうかとか、そこまでは聞かないでおきます。(悪い顔)

さすが〜!そういった事情まで考慮していただいて。笑
大丈夫です。すべて実話です。(笑)

もともと醤油屋さんじゃないですもんね。
伝統デザイン工房を立ち上げるぐらいだから、デザイン関係?

でもないんです。あの〜私もともと顕微鏡の営業マンです!

ん??

【PROFILE】
高橋万太郎 職人醤油代表/1980年生まれ。群馬県前橋市出身。(株)キーエンスにて精密光学機器の営業を経て、2007年(株)伝統デザイン工房を設立。
これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問し、180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる蔵元仕込みの醤油を100ml入りの小瓶で販売している。
【Column】<高橋万太郎さんの経歴>
万太郎さんが大学卒業した2003年は、ベンチャーブームで就職氷河期。
ベンチャーを立ち上げることが成功!という雰囲気の中で学生時代を生きていた一人です。
まずは、大学でも専攻していたデジタル顕微鏡や電子顕微鏡を取り扱う精密機器メーカーで3年間営業を学びます。
いずれは!という気持ちは持っていたものの、その当時は何か始める度胸も知識もまだなく・・・。
何を商売にしたいのか、ずーっと考えても、ずーっとわからず、漠然としていた状態で、偶然耳に入って来たラジオのことば。
子育て中の母親の「子供にどんな絵本を読ませたらいいですか」という質問に「長〜く読まれている本がいい本ですよ。時間が証明している。」と。
長く読まれている本が良いということは、日本の伝統的な、長く受け継がれているものが良いのではないかとヒントを得ます。
自分のことを考えると、おしゃれなパスタ屋さんよりも、古民家風のお蕎麦屋さんが好き。だったら、商売としてもそういうものの方が好きになれそうだ!
と広がっていきます。とはいえ、伝統産業といっても多種多様。
まずは、退社後に日本中を回った3ヶ月で出会った全てのものをリストアップしていきました。
日本酒、器、たわしなどなど、数にするとなんと300個。
当時は、売り先も何もない状態。
生モノなどの賞味期限が短いものは、いきなりは売れないし取り扱いも大変そうだと断念。
かと言って、職人の技術が詰め込まれている仏壇など、一つ300万ぐらいのものをどうしたら売れるのかと想像もできず。
残るは醸造食品系。残った10個ぐらいのアイテムを見ながら、思い出したことが一つあり、それがきっかけとなります。
「見学に行ってもいいですか」って電話すると「今からならいい」

ふと、私の母親が初めてインターネットで買ったのが醤油だったと思い出したんです。
あれはちょうどネットが始まった2000年ぐらいで。

え!よく醤油買いましたね。

びっくりだったんですよ。笑

僕も今びっくりです。笑

実家のカーテンを変えてくれた業者さんがくれたらしいんです、醤油。
で、それが美味しくて、うちの母親がどこで買えるの?って聞いたらネットで買えると。
それでパソコンを恐る恐る開けたらしいです。
でも、クレジットカード番号を入れる時になって「これ、本当に入れて大丈夫?」っていう。

わかります。わかります。笑

そんな電話が急に来たんです。僕としては、え?なになにパソコン使えるの?みたいな感じで。笑
それで、あの母を動かすぐらいだから、これは何かあるかもしれない!と思って醤油を勉強したいなって。

そういうはじまりだったんですね。

川崎に住んでいた当時、近くの醤油屋を調べると横浜に一軒あって、
「見学に行ってもいいですか」って電話すると「今からならいい」と。
・・・今?今か!急すぎる!と。
ー 一同笑い

とりあえずインターネットで調べた薄っぺらい知識を放り込んで行くと、
「電話じゃ若い声だと思ったけどお前ほんとわけぇ〜な!」って。当時は26歳だったから。
で、まだもうちょっと醤油の勉強したいんですけどって聞いたら、
近藤醸造っていうところを紹介していただいて、「お前いくか?」って。
で、すぐに社長が電話をしてくれて「ちょっと若いのがいるんだけど行かしていいか?」って、
翌週に勝手にアポイントを取ってくれて。笑
近藤醸造さんに行くと、次は茨城行こうかみたいな話になって、
30軒ぐらい最初に周るっていうところからスタートしました。

【職人醤油】
職人醤油・・・「近藤醸造」のお醤油も職人醤油で取扱っています。職人醤油は醤油のセレクトショップです。
日本各地の80種類以上の醤油を100mlの同じビンで統一しているのが特徴。小さいサイズなので気軽に味比べをお楽しみいただけます。
[ ▶︎ 公式サイト https://www.s-shoyu.com ]
「世の中のほぼ全ての人は絶対にわからず醤油を買っている」

当時は、まずは醤油の営業マンの感覚だったんで、
現場を見ないと何事もわからんだろうっていう気持ちでとにかく回ってたんです。
その時は、一つの醤油屋さんにコンサルみたいな形で入るような選択肢もあったかと思いますし、
業務用の問屋さんみたいな形になるとか、いろいろな選択肢がある中で、
いろんな醤油蔵を回っていると、なんとなく醤油のことがわかった気になってきて。
大豆からこうやって作るんだ〜みたいな。
あと、作る人も様々で、この人好きだな〜って思う人もいれば、絶対好きになれないなって思う人とかもいて。笑

その分野のちょっと離れている所から見れたり、ビジネスのあり方を勉強されてる方が見ると、
いろいろな醤油屋さんの作る工程とか、もったいないなぁ~って思う部分とかあったんでしょうね。

そういうのも踏まえて、わかった気になってた時に、
都内の百貨店で、壁一面に醤油が並んでいるコーナーがあったんです。
並んでいるんですけど、どれが良い醤油だかは全くわからなかったんです
自分がどれを買うべきかもわからなかった。
知識を持っているはずの自分にすらわからないということは、
世の中のほぼ全ての人は絶対にわからず醤油買ってるなーって思って。

そういうのに(万太郎さんは)敏感に気づいたんだね。

じゃあどうしたいかって思った時に、味比べしたいけど、
1リットルの醤油を3本買うにはもうハードルがどうにも高すぎる。笑
で、小さくしようって、このサイズ。

その発想がすごいよね。
万太郎さんも自分も、職人ではないじゃない?

そうですね。

つまり、醤油を真面目に作るってのは、それもそれですごいこと。
それともう一個、その過程においても、その素材や商品の幅みたいなものを上手に表現したり、
僕らみたいな人と人を繋げることで、それ自体の魅力を広く発信することができるとか、
そういうことまで考えてやってる人なんだろうなって思ってけど、そうなんだね。
だって、そうじゃなかったら、このサイズの醤油は発想できないと思うしね。
職人さんたちを口説くのも大変だろうし。笑

職人さんたちに、こっちがやってほしいことをしてもらうって大変。笑
でも最初は若かったのが良かった。それは間違いなくって。
もう遊び半分ですよね。
小さな瓶を持っていくと、
「おめぇー!」から始まって「別にいいけどいくらで売るんだ、どこで売るんだ」
「すみません、全然決まってないんです!」っていう。笑
「この小瓶で200円で売るとして1リットルに換算するといくらだよ?」
「2000円ですねー」「売れるかーー!!」ってそんなノリです。
そのあとは「しょうがねぇなぁ、100本ぐらい詰めてやるよ」って。
ありがとうございます!いただきます!みたいな。
ー 一同笑い

きっかけをチャンスと考えていたんだね。

「運に恵まれていた」といってしまえばそうなのかもしれない二人。
しかし、そこにはその「運」をカタチにしていくための行動や思いがありました。
そんな二人だからこそ人との繋がりには特に敏感でこだわりがあるよう。
この「出会いへのこだわり」は次回へ続きます。